前回、月次の認定情報差分から「所有者移転(中古売買シグナル)」が直近1か月で536件だったことを紹介しました。同じ差分にはもうひとつ、それよりずっと件数の多い区分があります——「抹消・失効」2,070件です。今回はこの数字が何を示しているのか、そして何を示していないのかを見ていきます。
「抹消・失効」はどう検出しているか
サンムーブは経産省の認定情報を月次で取り込み、前月時点で存在した設備IDが今月のデータに存在しなくなったケースを機械的に検出しています。これを便宜上「抹消・失効」と呼んでいますが、名前のとおり検出方法は「消えたこと」を確認しているだけで、消えた理由までは公表データから区別できません。
直近の月次差分:2,070件、所有者移転の約3.9倍
直近の月次差分(2026年5月→6月)の内訳は次の通りです(前回記事と同じ集計)。
- 抹消・失効:2,070件
- 代表者交代(SPCの持分譲渡シグナル):1,080件
- 所有者移転(中古売買シグナル):536件
- 新規認定:280件
- 運転開始:322件
全国のFIT認定設備・約39.0万件に対して、月2,070件は全体の約0.53%にあたります。単純に12倍すると年換算でおよそ2.5万件・全体の約6.4%が入れ替わる計算になりますが、これは季節性を考慮しない機械的な延伸であり、実際の年間ペースを保証するものではありません。注目したいのは、この「消える」件数が、同じ月に検出された所有者移転(536件)の約3.9倍という規模感です。
「稼働をやめた」と即断はできない
ここが最も重要な注意点です。「抹消・失効」は失効・取消・事業廃止・データ更新(表記の統合・ID振り直しなど)を区別できていません。つまりこの2,070件のすべてが「発電所が物理的に稼働をやめた」ことを意味するわけではなく、一部は制度上の手続きや公表データ側の整理に伴う見かけ上の消滅である可能性があります。逆に言えば、本当に稼働をやめた設備の件数は、この2,070件を上回ることはあっても大きく下回ることは考えにくい——という上限側の目安として読むのが安全です。
中古市場への示唆
この数字が示すのは、市場で毎月起きている「入れ替わり」の主役は、必ずしも中古売買(所有者移転)ではないという点です。新規認定280件・運転開始322件という参入側の動きに対し、抹消・失効2,070件という退出側の動きははるかに規模が大きく、認定を受けた設備が最終的にすべて中古市場で取引されるわけではないことがうかがえます。裏を返せば、まだ登録が有効なうちに売却の選択肢を検討しておくことの意味は小さくありません。ご自身の設備が現在も有効に登録されているかは、無料査定から設備IDまたは事業者名で確認できます。
この集計の前提と限界
本ページの件数は単月(2026年5月→6月)の差分に基づく実数で、季節性や複数月の傾向までは反映していません。「抹消・失効」の内訳(失効・取消・事業廃止・データ更新の区別)は現状のパイプラインでは実装できておらず、電源別・都道府県別の内訳も本稿執筆時点では公表可能な形で集計できていません。より精緻な内訳は今後の集計改善課題です。
※本ページの件数は、資源エネルギー庁「事業計画認定情報」の月次差分(2026年5月→6月)に基づく集計の実数です。査定額・収益予測は公表データに基づく推定値であり、実際の取引価格を保証するものではありません。
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